令和6年度 常任委員会視察報告
令和6年度の常任委員会視察研修は総務教育民生委員会の主催により、令和6年10月17日から18日において、長野県小布施町および姉妹都市である野沢温泉村を訪問しました。
1.小布施町 小布施町立図書館「まちとしょテラソ」
前町長の肝煎りで開設された町立図書館であるが、そのコンセプトを決めるにあたり住民参加による検討会が設置され、静かで無機質な従来の図書館のイメージを覆した、明るく斬新な造りとなっている。その設計には著名な建築家なども名乗りをあげたほか、住民の要望を取り入れて桜の古木を伐採せずに済む形状にするなど、様々な人の関わりや工夫の跡がみられた。
隣接する栗ヶ丘小学校にはフェンスがなく、まちとしょテラソがあたかも学校の一部であるかのような一体的な空間になっており、不登校の児童がまちとしょテラソに来ることで出席扱いになるなど、学校と連携して教育上の配慮もおこなっている。
20代で就任した女性館長を中心に、職員による企画展示や住民参加イベントも盛んで、どれかの本に美術館の招待券が挟まれているといった遊び心もあるなど、ハードとソフトの両面を兼ね備え、単なる図書館の枠を超えた、まさに「交流スペース」と呼べる施設であった。
御宿町にも以前から図書館設置の要望は多くあり、仮に御宿小学校の建て替えとなった際には、校舎に隣接してこのような施設を設置し、小学校の図書室を兼ねた誰でも使えるコミュニティースペースとして活用するならば、文化向上や人的交流の盛り上がりが期待できるのではないかと思う。
2.野沢温泉村 幼保小中一貫教育について
御宿小学校の更新に関して、町執行部はさかんに「小中一貫教育」を掲げ、中学校敷地内への移転の根拠としている。しかしながら、野沢温泉村では離れた立地において、のざわこども園、野沢温泉小学校、野沢温泉中学校が連携して幼保小中一貫教育「野沢温泉学園」を運営しており、その設立経緯や運営の実態を伺った。
野沢温泉村の人口は御宿町の約半分であり、少子化による地域力の衰退や村の未来を背負う人材育成などが課題であった。子どもたちにも人間関係の固定化、コミュニケーション能力の低下、自然と触れ合う機会の消失などの課題があり、平成20年5月から保小中連携プロジェクトが発足。それから5年の歳月をかけて平成25年に「野沢温泉学園」が開園した。
こども園や小中学校の全教員が野沢温泉学園の所属として連携し合い、ワーキングチームを編成して12年間の一貫した教育活動を実践している。特に英語教育とスキー学習に力を入れているように見受けられ、村に移住してきた外国人をゲストティーチャーとして起用するなど柔軟な教育をおこなっている。こども園から中学三年生までの英語教育やスキー学習の年間計画が1ページの表にまとめられていることからも、立地とは無関係に幼保小中の連携が確立されていることがうかがえる。
また、積極的に地域ボランティアが関わっているほか、飯山高校とも連携しており、高校の英語科教員による授業や、高校生が先生となる授業、職員同士も授業改善のための交流を深める取り組みをおこなっている。
「村づくりは人づくり、人づくりは村づくり」の基本理念に沿って、村の未来を担う人材を幼児期から育てるという目標に向かい、村全体が一丸となって取り組んでいる印象を受けた。あらためて、一貫教育に必要なことは立地の近さではなく、関わる人々の熱意と、それを後押しする行政の姿勢が重要だと感じた。
3.野沢温泉村 インバウンド観光の誘致施策について
スキーシーズンの野沢温泉村は、外国にいるのかと錯覚するほどの外国人観光客で溢れかえる。3,500人弱の人口の70%以上が観光産業に従事しているという村が、シーズン中は1日平均2,000人もの外国人を迎えるにあたって、その対応策について伺った。
【宿泊施設】
外国人観光客は夕食を外食でとることが多く(泊食分離)、当初は客単価への不安もあったが、夕食を作る必要がなくなって経費を削減できたことにより、逆に利益率が向上した。
後継者不在により空いた施設を外国人経営者が運営するケースが増え、経営スタイルとしても従来の旅館スタイルからアパートメントスタイルに改修する例が多くある。
【飲食店】
泊食分離により夕食難民が課題となったため、村では起業支援補助金を創設し、外国人やIUJターンの若者による開業が増えている。温泉街には空き物件はほぼなく、売買やリノベーションが盛んなほか、宿との送客連携、メニューの多言語化、外国人スタッフの雇用などがおこなわれている。
【キャッシュレス、外貨両替対応】
高齢経営者などを筆頭にキャッシュレス決済への対応に消極的な施設が多かったが、商工会による講習会や企業の介入もあり、現在は6~7割の飲食店がキャッシュレス決済に対応した。
金融機関はJAしかなく、外貨両替は不可能だったが、海外カードに対応したATMを村負担で導入した。
【その他】
平成27年から整備している村民住宅には42世帯100人ほどが入居し、特に単身者向けのワンルームは高い人気を誇っている。来月には新たにワンルーム12戸が完成予定。
4.まとめ
まちとしょテラソと野沢温泉学園に共通していることは、計画当初から住民参加型の検討会を設置し、住民の意見を聞きながら時間をかけて基礎となるコンセプトを作り上げたことであり、そのコンセプトに沿って施設(ハード)や体制(ソフト)を整えたことではないだろうか。行政主導ではなく、住民の声を行政がバックアップするという図式が成功した例ではないかと思う。
インバウンドに関しては、ATMを村のお金で設置したり、積極的に空き家や空き店舗などを活用するなどの施策をおこない、賑わいを絶やさないようにする努力が実を結んでいるように思われる。
まちとしょテラソや野沢温泉村の単身者向け村民住宅もそうだが、必要と思われる部分に行政が効果的に予算を投下することにより、人々の交流や賑わいを創出することに成功しており、結果として住民が豊かに暮らせる環境につながっていると実感した。
また、来年50回目を迎える海の子山の子交流を控え、野沢温泉村の議員の方々と交流する時間を持てたことも非常に有意義であった。
担当課:議会事務局